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高松高等裁判所 昭和46年(行コ)7号 判決

控訴人 大上和男 ほか二名

被控訴人 徳島県知事

訴訟代理人 藤田正博 曽川収 ほか一名

主文

本件各控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事  実 〈省略〉

理由

本件は、控訴人らが、公衆の通行に供されている道路につき、その道路敷地の所有者として、土地区画整理事業の施行者である被控訴人に対し、換地の指定手続を求める訴であることは、訴旨に照らし明瞭である。

しかしながら、行政庁に対し特定の行政処分をなすべきことを求める訴は、原則として不適法であつて、その行政処分が、いわゆる法律上の覊束処分であり、かつ緊急やむをえない事情のため事前の司法審査を必要とする例外的場合でない限り、かような訴は許されないものと解すべきである。

しかるところ、土地区画整理法にもとづく換地処分は、一定の区域内の土地の区画形質を変更し、従前の土地に存した権利関係を換地の上に移転し、場合により、換地にかえて清算金を交付することを内容とする行政処分であつて、ことに道路など公共施設の用に供している宅地に対しては、特別な配慮から、被控訴人主張のとおり、例外的な換地処分が予定され、法律上その準拠すべき基準は一般的抽象的な基準にすぎない(法八九条一項、九五条一項六号、六項、九四条等参照)から、現実にどのように換地を指定するか、あるいは換地を交付せずに金銭で清算するかは、各個の具体的状況に応じ、土地区画整理事業施行者の裁量に委ねるほかなく、右施行者が、法の目的に照らし総合的合理的に判断して、その行政的裁量によりこれを決すべきところである。

してみれば、本件のごとき土地区画整理法にもとづく換地処分は、事前に裁判所の救済を求めうる前述の例外的場合には該当しないものといわざるをえず、したがつて、土地区画整理事業施行者たる被控訴人に対し敢えて換地の指定手続を求める控訴人らの本件訴は、その余の点につき判断するまでもなく、不適法として却下を免れない(別紙目録〈省略〉記載の(一)、(二)の各土地につき換地計画に定められた清算金が確定しすでに控訴人大上、同井坂に対する換地処分がなされた事実は右控訴人らの明らかに争わないところであるから、右控訴人らとしては、右換地処分について、行政不服審査法にもとづく不服申立、行政事件訴訟法にもとづく抗告訴訟の提起など、適時に他の適切な手段により権利の救済を求めるべきである)。

よつて、控訴人らの本件訴を却下した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条八九条九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 越智伝 古市清 辰巳和男)

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